読んでみた

神域(上・下)

真山仁著/本体1500円+税(上・下とも)/毎日新聞出版

 世界中の研究者がアルツハイマー病の根治薬の開発に挑戦しているが、残念ながらなかなか進んでいない。そうした現状を打開すべく「夢の新薬」の研究を急ぐ科学者集団をめぐるサスペンスがこれ。『ハゲタカ』シリーズなどの経済小説で知られる作家の新著だ。

 研究とは、脳細胞を再生しアルツハイマー病を劇的に改善する人工万能細胞「フェニックス7」の開発である。日本政府の手厚い支援を受けて研究を進める最先端の頭脳集団に目をつけた米国政府・企業が、実用化による利益を狙って絡んでくるというストーリー。

 一方、宮城県のある町では認知症のお年寄りをめぐる不思議な出来事が続いている。いったいこれは事件なのか、そうではないのか。不審に思う地元警察の刑事たちが動き出す。さあ、どうなるのか。

 最先端の研究者や政府中枢の超エリートたち、地べたをはうような捜査を進める地元の刑事たちという対照的な人物群が登場。それぞれの会話や食べるもの、飲む酒の対比も面白い。