読んでみた

『マンガ 認知症』

ニコ・ニコルソン/佐藤眞一著(ちくま新書、880円+税)

 マンガ家のニコ・ニコルソンさんの実家は宮城県の海沿いにある山元町。東日本大震災の大津波で流された家を再建した体験を描いた『ナガサレール イエタテール』(太田出版)が有名だ。その実家で暮らす祖母の認知症が進み、不思議な行動をするようになる。介護するニコさんと母が困っているところに、とつぜん老年行動学者のサトー先生が登場し祖母の行動の理由を解説してくれるという組み立てだ。

 例えばこんな話。祖母がサイフがないと言って大騒ぎ。「あんた私のサイフ盗んだわね」と母を責める。母が「ホラ!ここに」といつもの引き出しからサイフを取り出すと、「どうせアンタが隠したんでしょ!」と怒りは増すばかり。そこにサトー先生が現れて言うには。記憶障害でサイフの置き場所を忘れてしまった→でもそうは思いたくない→自分を納得させるために「盗られた」という「虚記憶」を作ったのでは。周囲と心を通わせることが難しく孤独感が増すのが認知症。不安や恐怖から抜け出そうとする自己防衛の行動と考えられるという。

 マンガの後にサトー先生の解説文もある。当事者の心を理解することがなぜ大切かがよく分かる本。