読んでみた

なぜ、認知症のある人とうまくかかわれないのか?

石原哲郎著/2000円+税/中央法規

 仙台市で認知症の診察や支援に携わる著者の研究と実践、当事者との対談などを通して、認知症の人との関わり方を記した「指南書」である。

 関わり方として、「自分たちと同じ人権のある人として接する」「対等な人間関係をつくる」「適切な知識や情報を得る」の3要素を挙げる。支援がうまくいかないのはこの三つができていないためという。「どうせ理解できない」と、本人の気持ちを聴かず家族の意をくんで施設に入所させる↓描いていた人生設計に程遠いと感じた本人は不安や怒りから不穏な言動をする↓介護する側は疲弊し関係性がさらに悪化する——こうした悪循環が続くというわけだ。

 3要素を満たすアプローチの一つに、本人の立場に身を置くケア「パーソン・センタード・ケア」を挙げる。あらゆる人の価値を認め、独自性を尊重し、その人の視点に立つ。そしてサポートを受けながらも、できることは自分で行える社会的環境を提供することの大切さを説いている。