読んでみた

裁判例から学ぶ介護事故対応 改訂版

外岡潤著/第一法規/税込み2530円

 人手不足で余裕がなく、入居者の誤嚥や転倒事故が起きかねない介護施設は少なくない。不幸にも介護事故が起こってしまった時の対応方法に焦点を当てた、弁護士の著者による介護事業所などに向けた指南書だ。

 例えば入居者が食事中に急変した場合、現場に居合わせた職員が留意すべきは安易に誤嚥(ごえん)と決めつけないことだという。他の症状がないか観察し、情報を共有するようアドバイスしている。

 誤嚥だった場合、一通り措置を終えた後も油断は禁物。施設の管理者は口から採取した食物を保存するなどして証拠を残すとともに、関与した全職員から状況を確認しておくことを勧めている。

 事故報告で重要となる記録の残し方も、悪い例といい例を対比させて説いている。ベッドから転落した入居者が後に骨折していたと判明した場合、発見した際の様子やその後の経緯を詳細に記さないと家族は「なぜ最初に骨折を疑わなかったのか」と思うと指摘。痛みの有無を確認し、表情からも痛みはうかがえず汗もかいていなかったこと、着衣の上から触れても痛みを訴えなかったことなども入念に記しておくべきだという。