松下哲著 三省堂書店/創英社 税込み1650円
医師である著者はアルツハイマー型認知症(AD)の原因物質とされる異常たんぱく、アミロイドベータ(Aβ)やタウについて「感染症によって生じた」と考えている。脳内にAβなどが蓄積した原因や防止法を探るのが研究の本命と断じ、主張したいことをタイトルに込めたという。
著者はADのウイルス原因説について、各国研究者の論文を基に展開。①口唇ヘルペスなど単純ヘルペスウイルス㈵型は感染すると神経細胞内で長期間潜伏する②ウイルスは疲労やストレスなどによって再活性化し、ヘルペスを再発症させる③発症を繰り返す中で脳に感染してダメージを与え、ADを発症させる−−という。Aβはその過程で生じるとしている。
帯状疱疹ウイルスもやはり神経細胞で長く潜伏した揚げ句、高齢になると帯状疱疹を発症させる。複数回発症せずとも炎症を引き起こし、AD発症リスクを高めるという。
根拠については、ヘルペスウイルスによる脳炎の部位とADの病変部位が一致することや、ADの人の脳から単純ヘルペスウイルスが検出されていることなどを挙げる。
台湾では、50歳以上で年3回以上ヘルペスに感染した3万3488人を10年間追跡した調査結果がある。ヘルペスを抗ウイルス薬で治療した人と治療しなかった人を比較したところ、認知症になる割合は後者が高かったとしている。