読んでみた

老いは孤立を誘う〜「支援される・支援する」関係の再構築

山口道宏著/はる書房/税込み1650円

 コロナ禍で助長された孤独・孤立問題。少子化が進み世帯や家族機能が変容する中、「資源は有限」「自己責任で」と言い募る政府の下、医療、介護、保育は脆弱(ぜいじゃく)となり、雇用不安や貧困連鎖も招いた。戦後、民主主義に基づく「個」の確立を目指したはずが、いつしか「孤」に変貌してしまった社会を再び「個」の社会に−−という著者の主張が背骨を成す。

 貧困は孤立化の要因と化している。自己負担増が続く介護保険は利用控えが重度化を招き、更に介護の必要性を高める悪循環が続く。保険料、税の負担で精いっぱい、香典を出せず友人、知人に去られる人も少なくない。

 「ヤングケアラー」の存在は「介護の社会化」の風化と当該家族の孤立化を浮き彫りにした。政府は自己責任論を盾に、震災の復興住宅からも入居者を追い出す。「政党が 先に公助を 受けている」(朝川渡)「政治だけ 自己責任が ないらしい」(よんぽ)。本書内にちりばめられた川柳がアクセントとなっている。

 「孤立しない・させない」ため、政府には支援対象を世帯から個人へと転換すること、「網の目」と「アウトリーチ(支える側が積極的に働きかける)」支援、支えられる側の「受援力」(依存先の有無など)の検証を迫っている。