読んでみた

親の介護の「やってはいけない」

川内潤著/青春新書インテリジェンス/税込み1188円

 「親の介護は子の務め」。そう考える人は今も少なくない。NPO法人「となりのかいご」代表理事の著者は、こうした意識によって「介護」は自分が安心したいための「管理」へと変わり、結局親を幸せにしないと訴える。

 本人の意向でなく、家族が先回りして自宅に「手すり」を付けることはよくある。しかし本人は手すりを頼って歩くようになって機能が低下したり、逆に手すりが障害物となって転倒の危険を高めたりすることがある。

 「お父さん、夕ご飯に何を食べたか、覚えている」「今、いくつ?」。高齢の親にはつい聞いてしまう。認知症予防のつもりだ。それでも、答えられない本人はストレスで認知症が悪化していく。

 介護に頑張り過ぎるのは自分の不安を解消したいからでは−−。そんな問いが心に刺さる。かと言って、親が近くにいれば手を差し伸べてしまうのが家族の心理。自分で介護しようとするから離職を考えてしまい、また親を虐待してしまうことにもなりかねない。離れて親の老いを目にしないようにし、プロに委ねることが結局は「いい介護」につながるのだ。