メディカル・ケア・サービス編/Gakken/税込み1650円
認知症グループホーム最大手、メディカル・ケア・サービスの施設「愛の家」(322事業所)のスタッフが、認知症の解説とともに全国各ホームでのエピソードをつづっている。1年にわたる地方紙への連載を書籍化した。
妻の清子さん(仮名)と夫婦で入居していた勇さん(同)は5年前に体調を崩し、職員に「母さんを頼む」と言い残して亡くなった。清子さんは日々の出来事を思い出すのも難しい。それでも夫と職員の3人で出かけた時の事は覚えている。勇さんが自身の今後を職員に託したことを口にし「ここが私の居場所だから」と話す。
独り暮らしだった昭代さん(同)は当初入居に納得せず家族に不満をぶつけ、職員にも敵対的だった。しかし、スタッフは毎日声掛けをするうち、自宅に帰りたい思いと独居への不安が入り交じっている昭代さんの思いを知る。日常の一つ一つを何度も確認する昭代さんにスタッフは根気よく応じ、不安を安心に変える関わりを続けたところ、昭代さんは穏やかな表情を見せるようになった。
認知症になっても、一人ひとりに応じた手厚いケアにより、地域でこれまでと同様の暮らしを続けられることが分かる一冊だ。