内館牧子著/講談社/税込み1870円
「終わった人」「すぐ死ぬんだから」「今度生まれたら」「老害の人」――著者の高齢者小説4部作に次ぐ第5弾。
主人公の原英太(75)は、妻の礼子(71)から遺言状や断捨離などの終活を勧められても無視してきたが、母の死を機に考えを改める。ただし、英太の志向する終活は残された人への配慮ではなく、自分がやり残してきたことにケリをつける、というものだ。
期限ある人生、「他人軸」でなく「自分軸」での終活に臨む英太。「『今』っていうのは必ず『将来』とセットなんだ」「老人には『将来』も『明日』もないからな」と口にし、老人に「今」はない、と言う。
英太は高校時代、着替え中の女生徒をのぞき見し、傷付けてしまったことを今なお悔やむ。そこで謝罪しようとツテを頼って会いに行く。が、英太は全く覚えられていなかった。その過程で過去の不倫相手とも再開し、その女性が礼子に会いに来る。英太に巻き込まれていく同級生やその家族らも自身の老いに焦りを覚え、それぞれが自分軸の終活を始めていく。