読んでみた

ひとり暮らし認知症高齢者の「くらし」を考える

中島民恵子、久保田真美著/クリエイツかもがわ/税込み2420円

 高齢化が進む日本。ピークを迎える2040年には独り暮らしのお年寄りが約896万人に達する見込みだ。一方、この年の認知症の人は584万人と推計されている。独り暮らしの方へのインタビューを重ね、独居の認知症高齢者の思いや課題、折り合いをつけてよりよく暮らす工夫などを掘り下げている。

 ハルさんは、独り暮らしを始めた時は自由で心地よかった。認知症による物忘れが出て進行しても、周囲のサポートを受けて独居を続けることができた。だが、衛生面などで揺らぎ始め、やがていろいろなことを自分で判断できないようになり、事故の危険性などから周囲が限界を感じる。

 婚約者の戦死により生涯独身だったヨネさん、詐欺で大金を失ったキミさんら独り暮らしの人たちの声も多彩。自らの意思で施設入居を決めたミヨさんら、「本人らしさ」を維持する模索も描かれている。いずれも本人たちの気持ちを丁寧に書き留めている。また、健康、経済面など、調査に基づく独り暮らしの課題と対応の工夫も豊富に紹介されている。