山本學、朝田隆著/アスコム/税込み1650円
「死は日常だ」と語る、軽度認知障害(MCI)と診断された88歳の老優と、主治医による「老いを生ききる」をテーマとした対談集だ。
認知症と言えば、記憶や知識の減退が取り上げられがち。だが、山本氏は自分が怒りっぽくなったことを機に、認知機能の低下と「感情」や「意思」の衰えとの関連にも目を向けるようになった。そこから主治医の朝田氏との対話は、ネットの普及によって「薄っぺらい知」が世にあふれ「情」や「意」は後回しにされる「知偏重」の現状に移っていく。2人は周囲と協調し、人生経験を基に情と知を生かして生き抜いていく大切さを語り合う。
山本氏はそれまで平坦(へいたん)と思っていた道が緩い登り坂だと気づいた時に老いを初めて実感したと告げ、「明日以降はもっと下がるぞ、悪くなるぞと思わざるを得ないこと。そんな経験の連続こそが『老い』を生きるということなのだ」と述べたという。朝田氏はこうしたリアルな「老いの声」に無常の本質を思い、山本氏を患者であると同時に「老い」に関する師と認識するようになった。
「白い巨塔」で医師の里見脩二役を演じた名優が語る「生きる作法」と「死ぬ作法」。森光子さんら共演した他の俳優とのエピソードも豊富だ。