丹野智文、恩蔵絢子著/中央法規出版/税込み1870円
若年性認知症の当事者と、認知症の母を介護した経験を持つ脳科学者による対談本。「当事者の実感」と「科学的知見」という視点から、認知症と共に自分らしく生きるためのヒントを示している。認知症になっても、環境や周囲の関わり方次第で症状の表れ方が変わる点に光を当てている。
「認知症が進行した」と見える事象の多くは、脳の病変そのものより、介護する側の優しさが裏目に出た「過剰な手助け」によるものではないか、と問いかける。
当事者の丹野氏は、「仕事は辞めた方がいい」「1人で歩くと危険」と言われ続けた。しかし、何もしなくていい「本人の意欲を奪う環境」に置かれると意欲も能力も低下していくという。また恩蔵氏は「感情」を動かす体験が脳のネットワークを活性化させると解説し、当事者が挑戦できるよう周囲は「安全基地」になるべきだと話す。
「進行」を遅らせる習慣とは、失敗を笑い合え、本人が役割を持ち続けられる環境に身を置くことだと指摘する。「誰かの役に立っている」という実感を持つことが脳に最もいい刺激を与えるといい、診断名ではなく「個人」を見て、その人の感情や意思を尊重する重要性を説いている。