杉山響子著/小学館/税込み1870円
ベストセラー「九十歳。何がめでたい」の作家・佐藤愛子さんと暮らしてきた一人娘が、「何度クソババア、と思ったかわからない」という母の奇人ぶりを情感豊かに描いたエッセー集。今年1月の刊行後、重版を繰り返している。
100歳を超えて認知症となった母は、かつての母ではなくなってきていた。母すら以前の自分を忘れていく中、「この時間を覚えているのは私だけ」という切迫感から筆をとったという。
母は「憤怒の人」と呼ばれ、またワガママでもあった。娘の筆は母の元プロ野球選手との恋にも触れている。小学校6年生の頃、母から卒業後にはスイスへ留学するよう勧められ、顔面蒼白になった。当時の母の心情を「子供に邪魔されず二人きりの生活に浸りたかったんだと思う」と推し量る。
そんな母も、以前は言わなかった「ありがたいね」という言葉を口にするようになった。人の手を借りずには生きられなくなり、母も感謝せざるを得なくなった、と冷静な視線も注いでいる。
活火山のような人だ。それでも、母娘の濃密な日々をこう振り返る。「冷えて固まった火山岩のところどころにキラキラ瞬いているカケラを見つけるのだ」