読んでみた

いっぱい ごめん いっぱい ありがとー認知症の母とともに

岡上多寿子著(絵も)、1200円+税(木耳社)

 「なんでこれくらいのことができないの」「生家のことをくどくどといい始めた」愛する母が認知症になった。介護認定4。そして介護が始まった。先の見えない不安や社会と断絶したような孤独感、叱責後の無気力と自責の念、逃避できない現実、そして別れ。しかし、苦しみの中にも命の教えがあった。複雑な感情が渦巻く10年間の壮絶な日々を、ぬくもりあふれる絵と文で綴った感動の一冊。時にはユーモラスに、時には情緒的に、心の動きのままに卓越した表現力で描写している。断ち切りようのない親子の深い愛情が胸を打つ。

2007年 財団報「新時代 New Way of Life」より