読んでみた

あるつはいまあ十景

大住広人著1500円+税(水書房)

 人間だれでも老化は避けられない。老化がすすめば、だれ脳の機能が損なわれ、意識が壊れていくアルツハイマー病。しかしながら、、進行は遅らせても、いまだ根治できないのがこの病気の怖いところでもある。辛い半生を乗り越え、「これから安らかな老後を」と願っていた人に突如と襲う病魔。その悲惨さゆえに、だれでも、「ぼけだけにはなりたくない」と言う。しかし、捨てていい人生などあろうはずがない。病む人生、老いる人生に身をゆだねながら、純化され、高められていくいのちだってある。本書はアルツハイマーという不治の病に冒されながらもひたむきに生きる人たちの十の物語。無心の彷徨に心を揺さぶられる。

財団報「新時代 New Way of Life」54号より