読んでみた

1人でもだいじょうぶー親の介護から看取りまで

おち とよこ著、1500円+税(日本評論社)

 「お母さまが倒れました」。このひと言が先の見えない長い介護のトンネルに入る始まりだった。入退院を繰り返す母親。自宅に1人残された身体の不自由な父。そんな両親の介護が一人っ子で、多忙極めるジャーナリストの著者の双肩にのしかかった。取材、講演の傍ら、子育てをしながら介護をこなす綱渡りの日々。極度の疲労が出張先の著者を襲った。原因不明の炎症で緊急入院となり、万事休すの事態を救ってくれたのが、友人の支えだった。寝たきりとなった母にもやがて最期のときが訪れた。母の死から2年目、今度は父が高熱を出して入院、MRSAに感染して肺炎となり、手厚い看護を受けながら旅立っていた。本書は、16年間、母と父を介護し、看取った一人っ子のドタバタ介護体験記。少子化の今日、誰しも同じ道を歩んでも不思議がない。一人で親の介護に必死で立ち向かっている人への応援歌でもある。

財団報「新時代 New Way of Life」56号より