読んでみた

認知症を支える家族力 〜22人のデンマーク人が家族の立場から語る〜

ピーダ・オーレスン、ビアギト・マスン、イーヴァ・ボーストロプ編・ヘンレク・ビェアアグラウ写真・石黒暢訳/ 1800円+税/ 新評論

 本書はデンマークで大きな反響を呼んだ「悲しみと喪失のシリーズ」の1冊で、認知症の家族を持つ普通のデンマーク人がつづった手記を集めたもの。高福祉と言われるデンマークだが、市民の目で書かれた情報は貴重だ。

 タイトルの「家族力」は家族同士が結びつく力であると同時に、苦しい場面を切り抜ける力であり、さらに支えた経験を自分の人生にプラスに転換していく力でもあると訳者の石黒暢・大阪大学世界言語研究センター准教授は語る。

 本書には厳しい現実と共に心温まるエピソードも紹介されている。中には言葉の出にくくなった祖母が孫に向かって「私はもう言葉が話せないのよ」と明瞭に語り驚かせる話も。そして多くの家族が最終的には幸福な結末を迎える。

2011年4月 財団報「新時代 New Way of Life」66号より