驚きの介護民俗学

六車由実著/2000円+税/医学書院

 すでに本のタイトルで言い尽くしてしまったように、民俗学の研究者が介護職員に転身し、その介護現場がいつしか習い性となっていた聞き書きをするのにうってつけのフィールドであることに気づき、日々驚きながら探求している姿を生き生きと描いている。

 介護民俗学という言葉や分野があったわけではない。そこに着目した点に著者のセンスと旺盛な好奇心がうかがわれる。とはいえ相手は認知症のお年寄り。それでなくともきつい仕事の合間に積み上げた聞き書きの資料は、一つは施設利用者本人や家族への豊饒(ほうじょう)な「思い出の記」に、そしてもう一つは看護専門誌の連載とこの本に結実した。

 読んでいて気づかされるのは、著者が常に聞き書きの相手を人生の師と敬う姿勢を変えないことだ。その心が貴重なエピソードを導き出した源であることは間違いない。

2012年 財団報「新時代 New Way of Life」より