読んでみた

94歳。寄りかからず。前向きに おおらかに

吉沢久子著/1400円+税/海竜社

 40年以上地方紙に連載している分も含め、この1年間に身辺雑記としてまとめた〝90代エッセー〟の5冊目。日々の暮らしで見聞きしたことを、そのままにせず考え文章にまとめることがどんなに脳を活性化するか分かるだけでなく、生活を彩り豊かにすることを身をもって教えてくれる。

 書くテーマは幅広い。東日本大震災の被災者への思いから、庭先で摘んだ旬の食材を生かしての手作りの食事まで。小さな喜びを見つける達人である。今でも勉強会の場所に自宅を提供したり、若い人との会話を楽しむなど、生き方の見本がずらり。1人暮らしの女性への応援歌にもなっている。あとがきで原発問題に触れて、「老いても、たとえ『これから』の日々が短かろうと、こういう問題をしっかり自分の生活の中で考えなければ」と書く。社会につながろうという意識と責任感が見事。

2012年 財団報「新時代 New Way of Life」より