読んでみた

扉を開く人 クリスティーン・ブライデン

クリスティーン・ブライデン著、永田久美子監修、NPO法人認知症当事者の会編著/2000円+税/クリエイツかもがわ

 46歳で認知症と診断されたオーストラリア人の著者は実名で自身の体験を発表する。うつにもなったが、当事者の内面を発信し、認知症の常識を次々と変えていく。

 たとえば、自分たちは「“患者”ではなく“人”である」と表現し、新たに広がる世界があると訴える。あるいは「私たち抜きには何も始まらない」と認知症の人と家族に関わる活動や決定に本人が参加できるよう求めた。

 本書は過去の来日講演等で多くの人に感動を与えた数々の言葉を再考し、彼女に触発されて変わり始めた日本の医療、ケア、地域の人たちの姿を追う。また彼女へのQ&Aにもページをさいて、本人が語り出して開いた扉の向こうに広がる風景を活写する。

 姉妹本に「私は誰になっていくの?」「私は私になっていく」(改訂新版)がある。