認知症の人が安楽死する国

後藤猛著/1800円+税/雲母書房

 タイトルは刺激的だが、著者は安楽死を積極的に勧めている訳ではない。むしろ宮城県出身者の一人として東日本大震災で家族を失い悲しんでいる人々に涙し、救いの手を差し延べ、命の大切さを説いて回っているのである。

 出版の動機は、長年連れ添ったオランダ人の精神科医の妻が亡くなる前に被災地の人々が苦しむ姿を見て「オランダで心の悩みがどう扱われているか知ってほしい」と夫にオランダの医療と介護、福祉の本を書くよう勧めたため。

 助け合いが社会の基本になっているオランダでは、その一方で自己責任も求められ、そのバランスの上に、安楽死も認められている。もちろん本人が希望すればだれも可能というわけではない。認知症の人の意思が明確であり、複数の医師がそれを確認していること、さらに認知症の進行が本人に耐えがたい苦痛であることが証明されているなど一定の要件が求められている。

 両国の事情を照らし合わせることで日本の課題が見えてくる。