読んでみた

認知症カフェハンドブック

武地一編著・監訳/1600円+税/クリエイツかもがわ(075・661・5741)

 著者は認知症を「everyone's business 」(誰もがかかわること)とまず読者に呼びかける。これで本を出したことの半分ぐらいは価値があるかもしれない。ことの重大さを伝える一方で、家族に認知症の人がいたり自分がなっても特別のことではないという心構えができるからだ。そうは言っても初めてのことだと分からないことが多い。カフェは介護保険などで適切なケアを受けるまでの「空白」を埋める場所、旅で言えば最初の「宿場町」であり、安心して暮らしていくヒントを得ることができる居場所と説く。

 イギリスのアルツハイマーカフェやメモリーカフェに学んだ著者は、日本の事情も加味して開設の手引きを紹介する。スタッフの研修から運営資金の集め方、自治体との関係、場所選びまで例示し具体的で分かりやすい。さまざまな交流により新たなコミュニティー誕生の可能性をも示唆する好著。