読んでみた

社会とともに歩む認知症の本

宮澤由美著/1500円+税/新日本出版社(03・3423・8402)

 認知症に関する本は多いが、必要な情報を網羅的に盛り込むだけでなく、実際に認知症になった人や、その介護者を登場させショートストーリーふうに読ませる部分が生きている。もちろん仮名で再構成しているが、発病に驚いたり意気消沈し、あるいは介護に行き詰まって地域包括支援センターに相談することで光明を見いだすなど、認知症の人が社会に関わる中から浮かぶ課題を例示し、より理解を深める工夫が施されている。

 「もの忘れ外来」や「認知症カフェ」「ユマニチュード」といった最近よく話題に上がる言葉の説明も分かりやすく豊富だ。

 オランダやイギリスの認知症対策の紹介も日本との比較で参考になる。

 在宅医療・在宅死が医療・介護費の抑制のための手段に使われるのではないかという危惧には同感する部分が多い。