「おじいちゃんはデブゴン」(2015年・中国・香港合作)

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拳振るう カンフー達人
香港を代表するアクションスター、サモ・ハン・キンポーが20年ぶりにメガホンを取り、主演も務めたアクション映画です。
認知症になった人を描く作品はこれまでたくさん作られてきました。主人公が人生に絶望したり、逆に困難に真正面から立ち向かっていこうとしたりする姿を描くなど捉え方もさまざまです。
ところが本作の主人公は認知症が始まったばかりの、カンフーの達人という設定。言わば殺傷能力の高いカンフーという「武器」をどこまで自己管理できるかという課題も抱えているというわけです。
軍を退役したディン(サモ・ハン)は故郷で平穏に暮らしていましたが、ある日、国際犯罪組織に誘拐された隣家の少女を連れ戻すため、封印していた拳を振るい始めます。
この作品のタイトルを見ただけではどんな展開になるのか読めないかもしれません。
彼はそこに立つだけで空気を和ませる風貌の持ち主ではあるのですが、一方で人知れず認知症が徐々に進んでいるという自覚もあり、勝ち負けはもちろん、手加減が必要かどうかの判断もしなければいけないという立場です。「昔は強かったかもしれませんが、年も取ったし、こんな活躍は無理でしょう」との疑念を抱く人もいるかもしれません。
筆者としては「人々に夢を与えるのが映画」と考えているので、認知症になっても達人の域にとどまる人、あるいは以前よりもしっかりとしてくる人はいるかもしれないと思っています。
またカンフーの世界では、頭ではなく体が動作を覚えているとの異論も考えられます。そもそも相手によって手加減を考えられる人を認知症と言えるでしょうか。娯楽作品だからこそ何度も味わえる楽しみ方と言えるでしょう。
2024年12月