コラム「母を撮る」

「毎アル」の今、これから

関口祐加 映画監督

イケメン介護士と出かける母(2012年7月)

 昨年7月「毎日がアルツハイマー」が、公開された途端、「続編は、ありますか、続編を匂わす終わり方ですね」と言われ続けました。私のドキュメンタリー映画における師匠である原一男監督からは、以下のような言葉を贈られました。

 「関口さんは、映画作りが、"上手(うま)い"ですねえ。最高級の褒め言葉を贈ります。日本の作り手は、まじめに作っているのはいいとして、もうちょっとエンタテイメントを意識して作って欲しい、と日頃から思っているので、その点、関口さんは、さすが、と思いました。お母さんのキャラクターが、とってもチャーミングです。ところで、これ、続きがあるんでしょうねえ?」

 原一男(映画監督 『ゆきゆきて、神軍』『全身小説家』『極私的エロス・恋歌1974』他)

 「毎アル」を編集している最中には、続編など頭にはありませんでした。100時間以上撮った映像素材をどのように編集してストーリーを紡いでいくのか、ということに集中していたため、そんな事を考える余裕は全くなかった、というのが正直なところです。

 しかし、映画には、"THE END"が訪れても、母のアルツハイマー病は、現在進行形、故に母と娘の介護生活もこれまた現在進行形で続いていきます。よって、2013年2月の現在からみた映画「毎アル」は、改めて母のアルツハイマー病の初期を捉えたものだった、と認識しているところです。そして、この認知症の初期こそが一番大変である、とおっしゃった順天堂大学の新井平伊先生の言葉を今更ながらに理解し、得心しているところでもあります。

 母は、「毎アル」の中で、2年半にわたり家に閉じこもりました。私は、そんな母を目の前に、何とか現状を打破しようとあの手この手を尽くし、そんな積み重ねの結果が、ようやく出始めたのが、映画後の昨年7月でした。映画の最後に登場するイケメン介護士さんが、家に何回も足を運んで外出することを誘ってくださり、母は、遂にデイ・サービスに出かけたのです! あれから7カ月、母は、今や週3回、嬉々(きき)としながらデイ・サービスに通っています。

 さて、「毎アル」終了後も、私は、母にカメラを向け、その映像をYouTubeにアップし続けています。自分でもなぜ?と思うのですが、答えは、極めてシンプル。母が、魅力的な被写体であり続けてくれるからです。YouTubeへの累計アクセス数も今や41万回を軽く超しました。

 こうなると、やはり続編のことが、チラッと頭をよぎります。原監督の言葉が、脳裏にあるということもあるのかも知れません。でも、単に母の「毎アル」その後だけを見てもらっても面白くないのではないか。例えば、「ゴッドファーザー」3部作で言えば、2作目のパートⅡにあたる『ドン・コルレオーネは、いかに作られたのか』と同じように、母の認知症の発症時期を探ったらどうか。母がアルツハイマーと診断された2010年のさらに10年ほど前までさかのぼった過去を現在と交錯しながら、描いたら面白いのではないか。そんな風に考え始めています。

 いかがでしょう? どなたか続編の製作資金の応援をしてくださる方は、いらっしゃいませんか?  (*- -) m(_ _)mペコリ 懲りないですね!

2013年3月