コラム「母を撮る」

心のブレの理解が大切

関口祐加 映画監督

「毎アル2」の一場面(c)NY GALS FILMS

 ついに「毎日がアルツハイマー2〜関口監督、イギリスへ行く編」が、完パケ(音入れも終わって上映できる状態)になりました! この原稿を書いている時点では、イギリスからのフィードバックを待っているところです。また、特報として「毎アル2」の映像もYouTubeにアップされました!

http://youtu.be/qDuuKZLM4Pk

 公開は7月12日に決定です。ちょうど2年前に「毎アル」が公開された月と同じということになりました。あっという間の2年間でしたね。こんなにも「毎アル」が全国で上映されるとは夢にも思いませんでした。私にはうれしい誤算と同時に、感謝の気持ちでいっぱいです。

 さて、このコラムでも何回かイギリスのことを書きましたが、「毎アル2」の目玉は、やはりイギリスでの認知症ケアの紹介でしょう。私がイギリスに行きたかったのは、ズバリ「Person Centred Care」(PCC)発祥の地が、どのようにPCCを実践しているのか見たかったからです。私の考えでは、このPCCは認知症介護において唯一無二のケアの仕方です。PCCを深く理解することで、母がこれから向かう最終ステージへの心の準備が出来たと言っても過言ではありません。

 PCCが素晴らしいのは、認知症であっても認知症という病気よりも人間をしっかりと見据え、そこから最善のケアを考えることだと思います。全ては、認知症だからと結論づけずに、むやみに薬に頼らず、問題の原因を探ることに力を入れます。「認知症は予測不可能であり、こうすればいいという万能な法則などない」と言い切ったのは、「毎アル2」で登場するヒューゴ・デ・ウアール博士です。

「毎アル2」で使われるイラスト(c)三田玲子

 このように考えると、母の部屋を飛び出し国境を超えたのが「毎アル2」でもありますよね! 母の認知症のお陰で、色々な人と出会い、導かれ、遂には、海外の人たちとつながっていく。何と豊かな連帯になってきているのでしょう。認知症介護は、オープンにし、色々な人に助けて頂くというのが、本当に大切だなあとつくづく思います。

 先月号でも書かせて頂きましたが、今回「毎アル2」の医学監修をして下さったのは、順天堂大学大学院教授の新井平伊先生です。新井先生との出会いの経緯はすでに書きましたが、今回も出演を快諾して頂きました。新井先生は、「毎アル2」を鑑賞された後に「監督は英語が上手だねえ。イギリスの看護婦長さんとも意気投合しちゃって」とちょっとからかいながら感想を言って下さいました。英語がしゃべれるのは、29年間もオーストラリアに住んでいたので、当たり前ですよね! 新井先生が「毎アル2」の中でおっしゃっていることは、認知症の人の心の安定のために、心のブレを理解することが最も大切ということです。「人間の心は、人間にしか分からない」。まさしくそうだと思います。

 さて「毎アル2」の公開は、これからですが、母と娘の介護生活は、現在進行形。すでに「毎アル3」の撮影が始まっています。「毎アル3」は、すでにビックリ仰天の展開になってきました。いやはや、ネバー・エンディング・ストーリーですね!

2014年4月