コラム「母を撮る」

また母と離れ離れ

関口祐加 映画監督

 昨年6月16日に右股関節全置換の手術をし、1カ月に及んだ入院生活を無事に終えて、日常生活に戻りヤレヤレと思う間もなく、今度は、左の股関節が悲鳴を上げ始めました。長年、右をけなげにもかばって、支えてきた左股関節もかなり悪化していたのですが(何たって先天性両股関節変形症!)、右の存在に隠れてここまでひどくなっていることに気がつかなかったのです。9月の右股関節術後3カ月検診の際に、左股関節のレントゲンも撮ってもらうと何と!軟骨がなくなっていました。痛い訳ですよねえ……その場で左股関節全置換の手術を決めました。主治医の忙しいスケジュールが空いていたのは、11月10日。8日に入院し、10日の朝一番に手術という段取りになりました。

母と3週間ぶりの再会!

 さて、今回は母をどうしよう。真っ先に考えなければいけないのは、母のことですよね。前回5週間離れ離れになった時は、大いに荒れた母であれば、尚更です。今回は3週間ですが、何らかの策を練らねば! まず、宿泊デイ・サービスの場所を日頃昼間に週1回通い、場慣れしている場所に変更しようと考えました。前回そうしなかったのは、この宿泊デイには、看護師さんの巡回がなかったためです。直腸脱の問題を抱えている母には、万が一を考えて看護師さんに連絡がつく宿泊デイの方がいいという判断をケアマネさんと一緒にしたのですが、母にとっては、たまに泊まりに行くデイなので不安が募ったのだと猛省しました。現に、夜半は10分おきにトイレに行く、家でやることがいっぱいあるんだから帰宅させろと迫る、などなど、母は精一杯、抵抗した模様です。

 今回利用したお泊まりデイ・サービスは、一軒家のアットホームな雰囲気を持ち、何よりも母にとっては見慣れたスタッフと場所になっているという点がプラス要素でした。それでも本人が、泊まりに行くということを納得してくれなければいけないですよね。

(私)「あのね、今度は、左の股関節の手術をするのよ」

「ひええ! いつさ?」

「11月10日。3週間の入院だけど、どうする? お泊まりデイに行く? それとも一人で留守番している? ヘルパーさんと訪看は、いつものように来るよ」

「(即)一人は、不安だな」

「じゃあ、いつも週1回行っている○○デイには、宿泊設備があるから、そっちに泊まるようにするのはどう?」

「うん、それが、いい。」

 たとえ本人が、忘れると分かっていても相談することは、とっても大切だと思います

 こうして、前回の徹を踏まぬよう、宿泊デイ・サービスを変更しました。本人が納得していたせいか、今回は、荒れることもなく3週間を無事に乗り切ってくれました。もう一つ、前回の手術の際は、術前に姪と一緒に見舞いに来ましたが、今回は、術後4日目で見舞いに来て貰うようにしました。まだ十分に歩けない私を見て、手術の意味を理解し、引き続きお泊まりデイを利用することを母に納得してもらうためです。えっ、直腸脱の心配はどうしたかって? 答えは、意外とシンプルなところにありました! 母が便秘にならないように便秘薬を宿泊デイでも飲んでもらうこと、そして、万が一の時は、救急搬送をお願いし、妹が対応してくれることになりました。

 こうして私は、思う存分、自分の股関節の事だけを考えてリハビリに励みました。何と贅沢な3週間! お陰さまで病院にいるうちにリハビリ棟のトラック40メートルを両杖なしで歩けるようになりました。術後3カ月を迎える春には、美しい歩行の完全復帰を目指します!

2015年1月