コラム「母を撮る」

要介護5

「入浴後、一時意識を失った母」(C)NY GALS FILM

 前回私がイギリスに滞在している間、母はお泊まりデイで9連泊した後、帰宅し絶不調になったことを書きました。どうやら母の性格上、デイでは、全力で頑張ってしまうらしく、帰宅後のリカバリーが、認知症の進行と同時にかなり難しくなってきました。

 そんな矢先、今度は、訪問看護ん介助の入浴後、意識消失で倒れてしまいました。入浴後に意識がなくなるのは、これで2回目。血圧は80/40 まで急降下してしまったのです。ただし、訪看さんが、2名来ていたので、血圧が140になり、意識が回復するまで付き添って頂き、救急搬送は免れました。

 しかし、問題は、その後から始まったのです。急激に意識の低下が進み、母は日がなベッドで眠って過ごすことが多くなり、そうなると急速に足腰が衰え始めました。ついに、トイレには、自分で行けなくなってしまいました!

 さて、どうすべきか。私が、まずしたことは、母の主治医を往診医に変更したことでした。色々とすったもんだがあり、すでに往診医は2人目ですが、とてもいい医師に出会えたと思っています。基本的に母にとって適切な「関口チーム」を作ることが最優先なので、医師も母に合わなければ躊躇なく変更する!私は、オーディション落ちと呼んで楽しんでいるのですが……

 先日2人目の往診医は、初めての母の診察で白衣を着てきました。その時の母の反応が、大変興味深かった!母はベッドに寝たまま、往診医に向かって怒り叫んだのです。「一体いつまでここで寝ていればいいんですか!?」白衣を着た医師を見た母は、自分が入院していると思い、混乱したんですね。

 この場合の問題は、混乱した母ではなく、白衣を着た往診医にあるという点です。2人目の往診医は、まだ若く「毎アル」シリーズも知っているということでしたので、母の診察が終わってから、母のいないところであくまでもやさしく(!)白衣を着たために母の混乱と怒りを引き起こしてしまったことを話し、次回からは白衣は着ないようにお願いしました。

 そう、母のケアは、徹底してパーソン・センタード・ケアを心がけています。このパーソン・センタード・ケアの難しさは、人によっては、白衣を着た方がいい場合もあるかも知れないということではないでしょうか。認知症になっても十人十色。これは、ケアをする側が、常に意識しなければいけないことだと思います。

 そういう観点から言えば、母の衰え方は、ある意味では、パーソン・センタード・ケアの結果と言えるでしょう。在宅介護10年目ですから、実は母のペースに合った衰え方なのかも知れませんね。

 そんな風に考えている矢先、新しい要介護の通知が届きました。当然ながら要介護5でした。母の要介護の査定も母に合ったペースで上がって来たと納得しています。

2019年9月