今回は、介護保険の利用を通して、介護をする家族の覚悟について考察してみたいと思います。
先日、友人から緊急連絡が入りました。お母様が自宅で倒れ、病院に緊急搬送されたというのです。幸いにも一命は、取り留めたものの、さて、それからどうすればいいのか。リハビリ病院への転院も考えたそうですが、コロナの第11波(?)問題があり、転院すれば、面会謝絶になるだろうと言われたそうです。
転院イコールお母様には、会えなくなる。
友人が、ご家族と一緒に決断したのは、お母様を自宅に帰す、ということでした。その時点で私に連絡をくれました。
私は、友人に尋ねてみました。まず、お母様が、帰宅を望んでいること。医療・介護チームを作って、そんなお母様の要望に24時間応えられること。そんな話をしていく中で、お母様の要介護は、3のままだったことが分かりました。更には、ケアマネさんは、3では、例えば、24時間体制で、お母様を在宅で看(み)るには介護保険の点数が足りない。よって足りないところは、自腹でやるしかないと言ったそうです。友人は、弟さんや息子さんを抱き込んで介護を家族でやるしかないと思い込んでいました。
うーん。どうしたら、こんな展開になってしまうのか。ちょっとビックリしました。ここは介護保険の融通が利かないところなのでしょうか? それともなるべく家族が看るというお役所の意向なのか。
私は、友人に急務としてやるべきことは、要介護の見直し申請だとアドバイスしました。今のお母様の状態であれば、要介護5でしょう。歩行が出来ずに、トイレにも自力では行けない。尿管が付けられているのです。確か、区役所から病院へ要介護再申請の審査をする人が来てくれるはずです。
ここで気付かされたことがあります。介護は、シンプルであり、実は、複雑でもあるということです。介護する側の強い思い。何百回と目にして来ました。お母様には、不死鳥のようによみがえって欲しい。今一度、元気になってくれるはず。そして、要介護3のままでいて欲しい……
在宅医療に切り替えるということは<みとり>と向き合うということになります。私が、常日頃提唱している<終わりからの介護>をきちんと考えるということでもあります。どんなに強い思いが、介護する側にあっても、そこは冷静にお母様の状態を理解する必要があります。お母様自身の思いと、肉体の状況を受け入れ、何がお母様にとってベストな介護なのかを判断する。なぜなら、主役は、いつだってお母様だからです。
退院して自宅に帰りたがったお父様の意向を受け入れずに、病院で亡くなったお父様の最期を後悔している友人もいます。命の最期に付き合う家族には、大きな覚悟が必要だと思います。
友人は、ケアマネさんに連絡をし、ケアマネさんにお母様の要介護の再申請をお願いしたそうです。ケアマネさんは、快く受け入れてくれたそうですから、ようやく在宅医療のスタートラインに立てたのでは、ないでしょうか。
ほぼ10年間にわたる母の認知症ケアと最期のみとりは、私にとって大きな財産となりました。これからも他の方たちのお役に立てれば、幸いですし、何よりも自分の最期のあり方をしっかりと考える機会になったと思います。
2024年8月