コラム「母から学んだ認知症ケア」

介護相談

 「毎アル」シリーズのおかげか、時々介護の相談を受けることがあります。お話を聞いていて、ほぼ5分ぐらいで誰が介護を難しくしているのかが、分かります。

 先日も仲のいい友人から相談を受けました。友人は3姉妹の真ん中で、横浜在住ですが、お姉さんと妹さんは、ご両親が住んでいる岡山県に住んでいらっしゃいます。

 お正月休みに帰郷した時に見えてきたことがあったそうです。それは、末っ子で独身の妹さんが、80代のご両親の介護を一手に引き受けてやっていたということです。もちろん同居です。

 妹さんは、真面目にご両親の介護と向き合っていて、とても口うるさく、怒りっぽいご両親に耐えていらっしゃる。しかし、よく話を聞けば、妹さんのこだわりもスゴイのです。朝食は8時、昼食は、12時半、夕食は、午後6時。8時には、入浴でご両親のシャンプーのお手伝い。9時には、就寝。介護施設並みですね! 食事にもとても気をつけていらっしゃるそうです。

 友人が滞在した1週間のうち、2回ほど妹さんを連れ出して、息抜きをしてもらったそうです。妹さんの介護のやり方に文句を言うご両親。もちろん介護保険には、つなげておらず、デイ・サービスなどにも行っていません。

 どうやら、妹さんのケアのやり方とご両親の感情には、相関関係がありそうです。妹さんが真面目にケアをすればするほど、ご両親は怒りっぽくなってしまう。とても理不尽だと思います。こんなに一生懸命やっているのに……

 残念ながら、これは、ドツボにハマる一番苦しい介護なんですね。友人に私の母は、認知症の初期は、3年半入浴しなかったし、1年半外出をしなかったと言ったら心底、驚いていました。しかし、同時に本人の自尊心を傷つけないように色々と仕掛ける。

 友人の妹さんとご両親の場合は、残念ながら、次のステージに入り<何か>が起こるまでは、今の状況を抜けられないかも知れません。

 私は、ケアの究極の目的は、ケアを受ける人の満足と笑いだと思っています。それには、自分のやり方には、こだわらず、常に当事者のニーズを探ることが大切ですね。

 いつでも相談に乗る約束をして、友人と別れました。

2025年3月