2025年3月にオンラインで3日間、世界貧困フォーラムに参加しました。それぞれの地域からの複数参加でしたので、軽く30カ国は、超えていたかと思います。
取り上げられたテーマの一つは、アフリカ諸国の貧困からの脱出という大きなものでした。私は、自分で製作したドキュメンタリー映画とともに、世界中を旅して来ましたが、アフリカ大陸だけは、足を踏み入れたことがありません。芸術も衣食が足りてこそ、でしょうか。
オンラインというやり方で世界とつながって議論ができる。本当に便利な世の中になったものだと思います。私は、20代で経験したパプア・ニューギニアでの体験の話をしました。バナナもマンゴもたわわになるパプア・ニューギニアには、餓えはなく、最大の敵は、マラリアでした。当時の世界は、エイズで大騒ぎしていた80年代でした。エイズに躍起になる世界を横目にマラリアで亡くなる子どもたちを見て、やり切れない気持ちになったことを思い出します。
さて、無事にフォーラムが終了した後、ナイジェリアの若者から相談を受けました。私の紹介が、ドキュメンタリー映画の監督で、母の認知症について映画を製作しているということだったので、お母様のことで相談があると言うのです。
ナイジェリアは、もちろん、今回のテーマの国の一つです。アフリカ大陸西岸部に位置し、実は、アフリカ最大の産油国です。原油の他にも天然ガス、スズ、鉄鉱石、鉛、亜鉛など豊富な天然資源に恵まれているのです。人口も2億人を超えアフリカ最大であることから「アフリカの巨人」と称されています。それなのに国民は、なぜ貧困なのか、という大きいテーマはひとまず置き、認知症についてどんな相談を受けたのか、書きたいと思います。
相談をしてきた男性は、私の息子と同じぐらいのまだ20代の若者でした。お母様の正確なお年は、分からず、しかし多分50代? そして、認知症だと言うのです。若年性アルツハイマー病でしょうか。
ナイジェリアでは、認知症は一種の精神病と見なされているそうです。お母様は、症状がひどくなると病院の精神科に入院させられ、強い薬を処方されるそうです。今回の相談は、そんなお母様を病院側は、脳の手術(前頭葉らしいですが)をした方がいいと言っているという内容でした。認知症で脳の手術!
いいとも悪いとも言いようがありませんが、私が知りたかったのは、お母様は、どう思っているのか、と言う一点でした。息子さんは、即座にお母様は、手術をとても嫌がり、怖がっていると教えてくれました。それに医師からは、手術をしても五分五分だろうと言われたとも。
言葉を失いました。パーソン・センタード・ケアどころではないですよね。そんな中でもお母様の気持ちは、とても大切だとだけ言いました。その後、息子さんは、お母様と話し合って手術はしないことに決めました。
改めて、ナイジェリアにだって認知症はあるという現実を思い知らされました。そして、認知症の捉え方と周囲の反応は、認知症本人を辛(つら)く追い込んでいるという事実ですね。私が切望している認知症ケア・アカデミーは、JAPANをつけない方がいいのかも、と今真剣に思っています。
2025年6月