最近よく「日本人ファースト」という言葉を耳にするかと思いますが、今日は「患者ファースト」のお話を書きたいと思います。「患者ファースト」の理念は、患者さんのニーズを最優先にするパーソン・センタード・ケアだと考えます。しかし、実際の医療現場ではどうでしょうか。
ある人を介して透析クリニック並びに素晴らしい院長先生と出会いました。8時間という長時間透析と自由食のクリニックです。長時間透析研究所でもあります。普通の透析は、5〜6時間で、食べ物も厳しく制限されます。ところが、この長時間透析クリニックでは、完全に自由食です。患者さんが食べたいものを食べる。水分の制限もまったくありません。
この長時間透析クリニックは、日本では、横浜、いわき(福島県)、大津港(茨城県)、日立(同)の4ヶ所だけです。名古屋大学が研究所の役割をしています。長時間透析のコンセプトは、フランスから生まれたそうですが、実際に行っているのは、日本だけです。素晴らしい!
院長先生によると通常の透析を見ていて、大いなる疑問を持たれたそうです。治療をしているのに患者さんの具合はよくならない。どんどん痩せ衰えて、透析中に亡くなる人も出てくる。厳しい食事制限の結果、栄養失調のような状態になっていく。患者さんが食べたいものを食べて、透析を受けられないものか。
答えは、長時間透析にあったと言います。また8時間透析をすることで初めて取れる尿毒素があることや、ゆっくり回す方法で心臓などへの負担が大幅に減ることも分かりました。患者さんにとって、いいことだらけだと思います。
では、なぜ広まらないのでしょうか。薬を極力使わないパーソン・センタード・ケアと同じですよね。今の医療界では、受け入れられない? 8時間では、回転率が悪い? そうやって考えていくと「患者ファースト」の医療をやるということは、そう簡単ではないことが分かります。
長時間透析クリニックの院長先生は、20年かけて(かかって)4ヶ所にクリニックが出来たと教えてくれました。その間、目立たないように、ひたすら患者さんのことを考えて行動したそうです。
ところで、今友人が肺がんの治療を受けています。毎日抗がん剤を飲むのですが、肝心の食べ物が摂取できなくなり、どんどん痩せていき、見ているのが本当につらいです。本人は、自分のがんには、この抗がん剤が効くと信じていますが、総合的に見て果たしてどうなのか。この長時間透析クリニックの院長先生は、病と闘うのに痩せてはダメだという考え方です。だから自由食なんですね!
透析の患者さんも十人十色です。その十人十色に対応できる長時間透析。患者側が、医療現場で医師の言うことに合わせるのではなく、医療者が患者のニーズを把握し、各々にあった治療を行う。認知症ケアとまったく同じですね。
このクリニックには、世界中から医師たちが見学に訪れます。透析を何とかしたいと思う医師は、世界中にいるのだと思い、少し安心しました。同時に世界中で従来と同じような透析を行っているというのも事実ですね。院長先生は、医学部の教科書から変えないといけないとおっしゃり、さもありなんと思いました。<医術は仁術>には、もう戻れないのでしょうか……。