家族の会だより

結成40年 ないものを創り、あるものを繋ぎ、社会を変える

鈴木森夫・認知症の人と家族の会代表

 私たち「認知症の人と家族の会」は、2020年の1月で結成40周年を迎えます。振り返れば、やむにやまれぬ思いから集まり、「呆け老人をかかえる家族の会」として活動していた前半の20年は、「昭和」の終わりの10年プラス「平成」の始まりの10年でした。

 医療やケアの手が届かない中で、何もないところから、全国に「家族どうしが支えあい、助けあう仕組み」を創るとともに、「介護の社会化」を世に訴え、公的な介護保障制度の実現を求めて運動した20年でもありました。

 後半の「平成」が終わるまでの20年は、日々の介護の中で、本人の思いを知り、家族どうし、本人どうしを繋げる活動を全国に広げ、続けてきました。「痴呆」から「認知症」に名称が変わり、社会の誤解や偏見をなくし、認知症への正しい理解の啓発に努め、「たとえ認知症になっても安心して暮らせる社会」の実現に向かって、社会を変える運動をしてきた20年でした。しかし、期待に反して、介護保険制度をはじめとした医療・介護の制度は、「持続可能な制度に」という錦の御旗のもとに、否応なしに「負担増と利用削減」の流れが強まってきた20年でもありました。

 「平成」が終わり、5月からは、新しい「令和」の時代がスタートしましたが、今、「認知症」をめぐり新たな動きが加速しています。国会では、与党による「認知症基本法」を議員立法で提出する準備が進められています。また政府は「認知症施策推進閣僚会議」を立ち上げ、6月までに施策をとりまとめた大綱を策定し、政府の方針に反映させるとしています。私たちは、この動きに呼応して、「認知症の人も家族も安心して暮らせるための要望書(2019年版)」を関係省庁に届けました。

 私たちはこれからの「新時代」は、認知症を人生の一部としてとらえ、認知症の人をともに生きる社会の一員として包み込む社会にしていきたいと願っています。

 鈴木森夫・認知症の人と家族の会代表

2019年5月