家族の会だより

誰かに話すことで混乱を軽減

青木雅子・認知症の人と家族の会常任理事

 「家族の会」との出会いがなければ認知症の義母の介護、在宅での看取りはできなかったと思います。また、今の実母の介護には携わっていないかもしれません。

 1983年。4人家族の我が家で、それまで独り暮らしだった当時75歳の義母との同居が始まりました。10年ほどは平穏でした。

 それが93年頃、毎日何かを探していた義母が私に「物を盗った」と言い出しました。おかしいと感じて保健センターに相談しました。保健師が話を聴いてくれ、そしてこちらの気持ちを分かってもらえたことでとても安心しました。

 当時は年齢や義母の性格が原因と考えていました。認知症に対する知識はなく、脳血管性認知症と診断されるまでに3年かかりました。保健センターには町の在宅介護者の会も紹介してもらいました。介護の知識や情報、特に認知症介護については、在宅介護者の会に参加していた「家族の会」の人から学びました。

 要介護5となった義母は、94歳で亡くなりました。看取った後は喪失感、後悔の気持ちがありましたが、思いを聴いてもらえる「家族の会」の存在が私の中で大きくなっていました。

 義母の介護が終わった後、「家族の会」世話人として“つどい”に参加しました。介護者の方の思いを聴かせてもらう側として関わるようになり、今日に至っています。多くの方は一生懸命に取り組もうとされ、悩み苦しみ、混乱状態にいます。特に認知症初期の頃は本人、介護者のどちらもが混乱しています。介護期間は長くなり、悩みも人それぞれ違いますが、混乱した気持ちを誰かに話す(心を放す)ことで本人、介護者ともに落ち着きを取り戻していきます。それが「家族の会」のつどいであり、電話相談であると思います。全国47支部の電話相談、つどいに参加して混乱の時期をできるだけ短くして欲しいと願って私は活動を続けています。

 青木雅子・認知症の人と家族の会常任理事

2019年10月