家族の会だより

当事者と家族の声をカタチに

 昭和の終わりに私は祖母と母の確執を横目に短大で看護を学んでいました。「痴呆症」の学習もそこそこに、祖母のさまざまな症状の出現に母と翻弄されていました。その後、大学院で認知症ケアを深く学び、恩師である中島紀惠子先生から「認知症の人と家族の会」の存在を知り、2001年にニュージーランドで、04年には京都で開催された国際アルツハイマー病協会国際会議に参加する機会を得、衝撃を受けました。ニュージーランドでは、現役の官僚時代に認知症となり、後に日本にも来られて啓発に貢献したクリスティーン・ブライデンさん(オーストラリア在住)に出会い、京都では故・越智俊二さん(福岡)の話をうかがって認知症の人の思いを深く考えるようになりました。

 昨年度、認知症の人と家族の会では厚生労働省老健事業の助成を受け、認知症にかかわる意識の実態調査を行いました。私は調査・研究専門委員会の委員長として、計画から関与しました。調査はほぼ10年ごとに実施してきた介護家族の調査の他に、今回、認知症の人自身の思い、市民の認知症に対する意識、認知症の人や家族の支援者の認知症ケアに対する意識の調査を新たに加えました。

 4種類の調査と介護家族の経年比較を同時に行うことで、多面的な把握ができました。認知症の人の調査からは診断前後や生活にかかわる思いが分かり、市民調査、支援者調査からは認知症の人の立場に立とうとする意識の定着がうかがえました。また介護家族調査からは、世帯構成や年齢層の変化などによって、子の配偶者(嫁)による介護の激減、介護家族の高齢化、成人期の介護家族の職業継続の課題などが浮き彫りになりました。このほかにもたくさんの成果が得られました。

 私は、亡き祖父母や父母との思い出とともに、今は看護教育と市民活動の中でこの結果を多くの人と共有して、今後の認知症への私たちのかかわり方を考えていきたいと思います。

 報告書の全文(320ページ)を家族の会のホームページ に掲載していますので、ご一読ください。希望者には報告書を1000円でお配りしています。

原等子・認知症の人と家族の会常任理事、新潟県立看護大学准教授

2020年7月