家族の会だより

若年性認知症 生活安定を優先

認知症の人と家族の会島根県支部代表・黒松基

 2012年より島根県支部代表を務めています。県より委託を受けて若年性認知症支援コーディネーターの活動もしています。

 島根県は横に長く広がっています。胸を張って高齢県と呼べます。しかし、若年性認知症の人がいないわけはなく、県が調査したところ、三つの事業所に当事者がいることが分かりました。県の聞き取り調査に同行すると、どの方も仕事を続けることができずに退職していました。

 話を聞くと、事業所の皆様が協力し、その方がどの仕事ならできるだろうかとあれこれ工夫してくださったとのこと。従業員の皆様の温かさを感じることができました。事業となると「想(おも)い」だけでは成り立たず、少し残念でしたが、家族と話し合いを重ねたうえでやむなく退職に至ったそうです。

 後にその中の一人の男性(58)とご縁がありました。就労支援活動先から「一般就労は難しい」と判定されてはいましたが、本人は障がい者としての就労は望んでいないとのことでした。そうこうするうち、かかりつけ医に2年近く通っているにもかかわらず、障がい者年金の手続きが行われていないことが分かりました。就労より先に生活の安定が必要と思い、社会保険事務所への同行や各手続き、一般アパートから公営住宅への転居も手伝うことになりました。

 なぜ、こんなに手助けが必要だったかと言うと、当事者の妻が外国人だったために漢字が書けず書類の作成などができなかったからなのです。役所の方には「本人の目の前で代わりの方が書くのはいけないことではありません」と言われましたので、ほとんど私が代筆しました。肝心の医療機関への受診に関しては本人も妻も質問に答えられず、医師とはほとんど話すことができていませんでした。医療機関を変えた今は医師が本人の話をうまく聞いて下さり、本人もとても気に入っています。

 若年性認知症のコーディネーターとしてはこの程度の関わりでいいのかも知れません。それでももう少しの間、外国人の妻の困りごとや5歳・9歳の子どもたちのことなど、遠目から様子をみていきたいと思っています。

 認知症の人と家族の会島根県支部代表・黒松基子

2021年8月