家族の会だより

権利を守り地域共生社会の実現を

認知症の人と家族の会理事、司法書士・中野篤子

 私は成年後見業務に取り組んでいる司法書士です。司法書士は、登記や相続・遺言等の業務を行う際に高齢者の方と接することが少なくないのですが、中には認知症などでご本人の意思が十分に確認できない場合もあります。また、判断能力の低下に付け込まれ被害にあったという相談を受けることも少なくありません。そのような中で認知症の人らの権利を守り、支援する仕組みの必要性を痛感し、新しい成年後見関連法が施行される前年の1999年(平成11年)に、「(公社)成年後見センター・リーガルサポート」が司法書士により設立されました。

 「家族の会」に入会したきっかけは、前代表の高見国生さんに司法書士の主催するシンポジウムに登壇していただき、話をうかがったことです。法律の改正は認知症の人にとって必要でしょうし、司法書士さんも頑張ってくださいと言われた後に「でも、認知症の人だけでなくその家族のことも考えてください」ということを付け加えられました。

 後見人は、本人のために法的な権限を持ってさまざまな行為を行います。しかし、人は誰でも一人で生きているのではなく、様々な人とかかわる中で生活していますので「本人」だけを切り離して支援のあり方を考えることはできません。特にその人の「家族」の存在や関係性を知ることの大切さを実感するときにこの高見さんの言葉を思い出します。

 今、国の「成年後見制度利用促進基本計画」に基づき、制度が必要な人がメリットを実感して活用してもらえるための取り組みが進んでいます。その中で、権利擁護支援の地域連携ネットワークの構築の必要性も指摘されています。判断能力が低下しても、必要な支援の仕組みがあり、安心して住み慣れた地域で馴染(なじ)みのある人たちとともに生活を続けられることは、誰もが望むことでしょう。そのような地域共生社会の実現に向けて少しでもお役に立つことができればいいなと考えています。

2021年10月