家族の会だより

本人のことばで正しく理解を

認知症の人と家族の会理事
岡山県支部代表 安藤光徳

 「認知症になると何も分からなくなる」「認知症になったら人生おしまいだ」などという考えが間違っていることは関係者には次第に理解されています。しかし、一般の方には認知症に関する誤解や偏見がまだ残っています。

 具体的な例として認知症の診断後、地域の方々に自身や家族が認知症の診断を受けたことを隠している人が多くいます。そのために、一人で散歩や買い物に行って家に帰れなくなることを心配し自宅で過ごすことが多くなるのが実態です。地域の理解があれば、家に閉じこもることなく、その人らしい生活を送ることもできます。

 「家族の会」全国各支部の活動の三本柱は「つどい」「電話相談」「会報発行」ですが、そこに寄せられる認知症の本人や家族の声を聞いていると、地域の方々の無理解、無関心が心身のストレスになっていることが分かります。

 一方、全国各地の講演会や研修会などで本人が語る機会が多くなってきました。参加者からは、本人が発することばに感銘し、共感し認知症観が変わったという声を聞きます。本人が発することばには説得力があります。

 厚生労働省が本人の発言機会を増やそうと5人の「希望大使」を任命して以来、「地域版希望大使」も増えてきました。都道府県の認知症に関する普及啓発活動などへの協力者として任命されています。社会(地域)の認知症観を変えるためには、認知症を正しく理解できるようになる啓発活動が大切だと思います。その大きな力になると思われるのが本人のことばです。

 「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」には、国民の責務として「国民は、共生社会の実現を推進するために必要な認知症に関する正しい知識及び認知症の人に関する正しい理解を深めるとともに、共生社会の実現に寄与するよう努めなければならない」と明記されています。

 これからは、今まで以上に本人のことばを聞く機会が増えると思います。そのことが古い認知症観を変える大きな力になることを期待し応援をしたいと思います。

2023年12月