家族の会だより

「介護者憲章」がかなう社会へ

認知症の人と家族の会理事
愛知県支部代表 尾之内直美

 1.介護者は一人の人であり支援を必要とする人とは別個の存在である。
 2.介護者は、自分の介護のありようは自ら決めることができる。
 3.地域社会のなかで介護者の健康と幸せは護られる。
 4.介護者の経験と知識は地域社会の財産である。
 5.介護に関わる子どもや青年は、自分の生活を楽しみ自らの可能性を追求できる。
 6.介護者にとって必要な支援は適切に行われるべきである。

 これは、「認知症の人と家族の会」という当事者の立場から、介護者支援の方向性を示すこと、介護を担っている家族の視野が広がり、自らの行為の価値を再認識し、「私自身も、支援を求めてよいのだ」と思えるようになることを意図して、同会愛知県支部で2010年に作成した「介護者憲章」です。

 私は、結婚して間もなく26歳から介護が始まり、子育てと仕事をしながら義両親の介護をしてきました。介護中に“つどい”の場に参加し、早いもので活動歴30年ほどになります。長年「なぜ介護する側には目を向けてもらえないのか……」という思いがあり、講演会や専門職の研修会などで家族支援の大切さを話し続けてきました。

 近年の認知症の増加とともに、介護者人口も増え、今は誰もが介護者になる時代がやってきています。老々介護はもとより複数の人を1人で看(み)ているている方も多く、中には5人を介護されている方もいます。認知症の両親の介護と障がいのあるごきょうだいの介護を同時に担い、加えて仕事とも両立させねばならないなど、介護者の置かれている状況はとても複雑で多様化してきています。

 そういう中で、専門職の方から「自分の親が認知症になってやっとあなたが言っていた介護家族の大変さが分かりました」とよく声をかけられるようになりました。しかしまだまだ家族支援は発展途上です。介護者が1人の人として自分の人生を生きていける社会、「介護者憲章」がかなう社会を目指して今後も家族の思いを広く伝えていきたいと思っています。

 認知症の人と家族の会理事・愛知県支部代表 尾之内直美

2024年2月