認知症、選挙戦での報道のあり方

2025年の新たな年を迎えました。昨年は皆様にとってどういう年だったでしょうか。世界的にはパリオリンピックがあり、米国大統領選挙がありました。大統領選では、民主党候補者がバイデン大統領からハリス副大統領に変わり、トランプ氏の返り咲きを阻止しようとしましたが、結果はトランプ氏の圧勝で終わったことは記憶に新しいかと思います。
この選挙戦で民主党候補者が交代する一要因だったのが、バイデン大統領の認知機能に対する世間の懸念でした。4年前の就任時点で既に78歳で、再選を狙った今回は80歳を超えていました。その年齢もあって米国では認知機能維持の面で、当初から一部不安視する声がありました。そんな中、バイデン氏がテレビ討論で言葉を詰まらせるなどしたため、世間の不安は一層増しました。
この選挙劇を受けて、英国アルツハイマー協会は四つの理由から、政治候補者に「認知症」のラベルを貼ることと、その報道のあり方に懸念を示しています。一つ目は画面越しに、認知症かどうかの判断は不可能という理由からです。認知症の鑑別診断は過去の病歴や画像診断など総合的な判断によって下されます。テレビ討論などの様子だけで判断することは適切ではありません。
これに関連し、二つ目の理由として、認知症の医学的鑑別診断を受けてない人、また会ったことのない人を「認知症」とカテゴライズすることは倫理的に不適切だということを挙げています。そして三つ目は、認知症の否定的見方に寄与するというものです。政治家を認知症と関連づけて話題にするとき、その政治家の主張を捻(ね)じ曲げる意図が込められていることがほとんどで、その関係で認知症も否定的に語られます。
最後、四つ目の理由は、「認知症」疑惑を報道する際、メディアは認知症に対する不適切な言葉を使うことがよくあるからとしています。大統領選での米国社会の反応と同協会が挙げた懸念点は、日本に住む私たちも大いに考えさせられる部分がありますね。協会の原文を確認したい方は、以下をご覧ください
原文はこちらから(英字)
渋谷美和・認知症の人と家族の会理事
2024年12月