地域で支える 安心の生活

私は、後見人として認知症の人とかかわっていますが、最近は、身近に頼れる家族がおられないケースも増えていると感じます。そのような場合でも支援に隙(すき)間が生じないように、医療、介護、福祉、行政など幅広い職種の人と連携して本人が望んでいる生活が送れるように取り組むことが必要です。
しかし、人が日々生活を送る中ではさまざまな課題も生じます。「身元保証人」を求められるのもその一つです。先日も体調を崩して救急搬送をされたご本人の入院の手続きに行ったところ、入院の書類の「身元保証人」という欄に署名を求められました。
こういう時は「私は後見人なので身元保証人にはなれません。しかし、ご本人に病状を説明する際には一緒に話を聞きますし、緊急時の連絡先にもなります。通帳も管理していますので入院費の請求書は私宛てに送ってください。退院時のカンファレンスにも参加します」などと説明しながら、「身元保証人」ではなく「後見人」と書いて署名することになります。そのように説明するとおおむね納得してもらえるのですが、「身元保証人」の署名欄がある書類を出されるたびに、こういう記載がまだまだ少なからずあるのだなと複雑な思いを抱いてしまいます。
以前なら本人のことについて包括的に対応できる「身近な家族」がいて、その人が「身元保証人」として署名をされていたのではないでしょうか。しかし、数々の事情で「家族」に頼れない人が増えている中で、そのような人に「家族的」な役割を持つ「身元保証人」を求めることは酷なことだと思います。これからは、誰かが「身元保証人」として署名をすればそれでよいということではなく、地域の中で多様な人や仕組みが関わり、その人を支えていくということが求められるのではないでしょうか。年をとっても、認知症になっても安心した生活が送れる社会を目指し、私も微力ながら活動を続けていきたいと考えています。
中野篤子・認知症の人と家族の会理事
2025年6月