家族の会だより

介護する家族に人権は「ある」

認知症の人と家族の会共同代表理事 和田誠

 認知症の人を介護する家族に人権はあるのか。

 問いとしてはあまりに素朴で、しかし現場にいる者にとっては切実です。認知症のご本人の尊厳や権利を守ることは、ようやく社会の共通理解として広がりつつあります。一方で、そのそばで日々介護を担う家族の人生や希望は、どこまで「権利」として認められているのでしょうか。

 イギリスやスコットランドでは、介護者の権利が法律や憲章のかたちで明文化され、「介護している人には、こういう支援を受ける権利がある」という考え方が社会の前提になっています。介護者は、単に「がんばっている人」として称(たた)えられるだけでなく、自らの健康、生活、仕事、休息について正当に求めることのできる主体として位置づけられています。

 では、日本ではどうでしょうか。認知症の介護家族のもとには、昼夜を問わず不安や負担が押し寄せます。「怒ってはいけない」「休んではいけない」と自分を責め続けている方も少なくありません。制度やサービスの説明はあっても、「あなたには、こう生きる権利がある」と言ってくれる言葉には、なかなか出会えないのが現実です。

 認知症の人と家族の会は、この現状を変えたいと考え、「認知症の人とともにある家族の権利宣言」を作りました。海外の介護者憲章を学び、長年の調査やつどい、電話相談で寄せられた声を土台に、日本で初めて、認知症の介護家族の権利をことばとして紡ぎ出そうとしたのです。目指したのは、専門家のための文書ではなく、介護のさなかにいる家族が「これでいいのだ」と、自分の人生を意識し直すための羅針盤でした。

 「介護をしながら自分の時間を持っていい」「助けを求めることを遠慮しなくていい」。こうした当たり前のことを人権として言葉にすることは、私たち自身の内なるあきらめと向き合う営みでもあります。認知症の人を介護する家族に人権はあるのか。この問いに、私は明確に「ある」と答えたい。その権利を当たり前に口にできる社会をめざし、権利宣言という小さな一歩を、皆さんとともに育てていきたいと願っています。

認知症の人と家族の会共同代表理事 和田誠