介護人材不足による機能不全
当会は全国47都道府県に支部を置き、日々多くの電話相談を受け付けております。その中でも、認知症の方の介護保険サービス利用に関する相談は大きな割合を占めており、近年の介護現場における深刻な人材不足を背景とした、にわかに信じがたい、思わず耳を疑ってしまうような切実な声が寄せられます。
具体的な事例として、「特別養護老人ホームへの入所を申し込んだ際、『歩き回るなどの認知症のBPSD(行動・心理症状)が強い方は、対応する職員が疲弊して離職してしまう恐れがあるため受け入れが難しい』と断られ、途方に暮れた」という声があります。また、「利用中の小規模多機能型居宅介護の事業所から『人手不足のため、通所時の送迎は家族で対応してほしい』と書面で通知され、困惑している」といった相談も寄せられています。驚くべきことに、これらは決してレアケースではなく、一定数存在しているのが現状です。
さらに、新型コロナウイルス感染症の5類移行後も、多くの入所施設や居住系サービスにおいて、面会の時間帯や場所の制限が継続しているとの不満も届いています。家族にとって面会は、本人の生活の様子を見守るだけでなく、身体の清潔保持や更衣などのケアが適切に行われているかを確認する重要な機会でもあります。そのため、「面会が制限される中で電話を入れても、業務に追われているためか対応が冷淡に感じる」との声も少なくありません。
介護人材確保困難に起因するこうした機能不全は、今後さらに深刻化していくのでしょうか。介護保険法を含む「社会福祉法等の一部を改正する法律案」が可決・成立し、担い手不足で介護サービスの維持が困難な地域に対応するため、人員基準や介護報酬を弾力化できるようになりました。しかし、介護保険料や利用者負担が増加の一途をたどる中で、なぜ利用者や家族側ばかりが一方的に我慢を強いられなければならないのでしょうか。この歪(ゆが)んだ現状に対して、何とも言えないやるせなさと、深い危機感を抱かざるを得ません。
公益社団法人認知症の人と家族の会 副代表理事 志田信也