公益財団法人認知症予防財団と毎日新聞社、河北新報社共催のシンポジウム「認知症にどう対応するか」(厚生労働省・日本医師会など後援、アメリカンファミリー生命保険会社協賛)が11月15日、仙台市の市青年文化センター・シアターホールで開かれた。1300人を超す応募があり、抽選で選ばれた500人強が目黒謙一氏(東北大学大学院教授)の「認知症の基礎知識と地域における早期発見と対処」と題する基調講演などに熱心に耳を傾けた。東北弁を巧みに使った川野目亭南天さんの東方落語で聴衆は息抜きのひとときも持った。全国をめぐる認知症予防財団のシンポジウムはこれでちょうど50回目の節目を迎えた。
プログラム | |
基調講演 | 「認知症の基礎知識と地域における早期発見と対処」 目黒 謙一氏(東北大学大学院教授) |
---|---|
東方落語 | 川野目亭 南天氏 |
特別報告 | テーマ1「認知症のケア」 山崎 英樹氏(いずみの杜診療所医師) テーマ2「認知症に与える環境の影響-日伯国際比較」目黒 謙一氏 |
質疑応答 | 回答者 目黒 謙一氏 、山崎 英樹氏 |
進行役 | 鈴木みゆき氏(介護老人保健施設さくらの杜副施設長) |
高齢社会を反映して、認知症に対する世間の関心は高い。しかし、認知症の正しい理解が十分浸透しているとは言い難い。ぼけと認知症は違う。前者は一般用語で定義がないが、後者は定義のある医学用語で病気だ。認知症とは、脳の病変もしくは脳に影響する全身疾患があって、記憶や言語などの複数の認知機能が障害された状態が慢性に持続し、その結果社会生活の水準が低下した状態を言う。その原因は神経変性疾患や脳血管障害、頭部外傷、全身疾患などさまざまだ。認知症の早期発見のためには、家庭生活・地域生活の観察が重要である。そのために、国際的に確立された臨床的認知症尺度(CDR)を用いる。CDR1以上は認知症に相当するため、早めに専門医を受診し原因疾患の鑑別を行い、治療することが望まれる。
宮城県旧・田尻町(現・大崎市)で、98年に高齢者住民1654人を対象に認知症の有病率調査を行った。認知症は65歳以上の8・5%、原因疾患はアルツハイマー病が最も多く、次いで脳血管性認知症、レビー小体型認知症の順だった。主な特徴を示すと、アルツハイマー病は緩やか、静かに発症し徐々に悪化する。生活上のエピソード記憶障害が主要症状で、生活に支障を来す。また「財布を盗まれた、嫁のせい」などの物盗られ妄想も多い。一見正常のこともあるが病気として対処することが大事で、進行を遅延させるドネペジルの内服や妄想などへ向精神薬の少量投与が有効だ。また生活の質(QOL)維持のため、見当識訓練と回想を取り入れたグループワークも有効だ。
脳血管性認知症は、脳血管障害の後3か月以内に認知症の症状が出現する。脳血管障害の部位に関連して麻痺などの身体症状を伴う。障害の部分と保持されている部分の症状が混在しているのが特徴だ。言葉の表出が悪いが内面の人格は保持されている場合があるので、丁重に対応することが大事だ。血管性危険因子の治療や脳梗塞の再発防止、リハビリによってある程度改善が期待できる。
レビー小体型認知症は、緩やかに発症し進行性に悪化するが、初期からバランス障害を伴いやすい。夢でも見ているようなリアルな幻視を伴うことも特徴で、動物や人物などが奇異な場所に見られる。反復する転倒や失神、夜間奇声も特徴的である。しかし、薬剤投与でそのような行動障害は軽減できるので、早期の専門医受診が望まれる。
2011年2月