「未来を考える会」東大でフォーラム 「災害時にどうする認知症の人」

 「アルツハイマー病予防・治療の最前線」に関する連続フォーラムを企画している「認知症の未来を考える会」(大友英一会長)が、「ワクチンはどうなりましたか?」をテーマに第1回目フォーラムをこのほど東京大学農学部の弥生講堂一条ホールで開いた。東日本大震災からほどなくの開催となったため、順天堂大学の田平武教授と筑波大学の朝田隆教授による緊急対談「災害時にどうする認知症の人」や、朝田教授による「今、新しく使えるアルツハイマー病の薬」と題する講演などタイムリーな企画が並んだ。

 ◇集団行動で安心感 保健師から情報を 田平・順大教授と朝田・筑波大教授対談

災害時の認知症の人への対応で緊急対談する田平武教授(左)と朝田隆教授

 田平教授が聞き手に回り、朝田教授が語るという構成は、ポイントが絞られていて大変わかりやすく、すぐに次の災害が起きても、あわてることなく使えそうな情報が詰まっていた。それを要約すると以下のようになる。

 ▼災害が起きたら「災害弱者」である認知症の人を一か所に集める。その方が対処しやすいし、みんなで集まると仲間がいることで安心できる▼寝たきりの人を運ぶとき、タンカだと階段を下りる際に被介護者が滑り落ちる恐れがあるので、パイプいすに移ってもらい座った状態で固定した上で移動する。水平移動に戻ったら再びタンカに移ってもらうなど使い分ける▼認知症の軽度の人は「津波」と聞けば逃げるので問題ないが、重度の人はどうするか。その答えは、重度の人でも脳の海馬の先端にある扁桃体は病変が起こらないか起きても進行が遅いので、危険情報はかなり理解できると考えていい。「逃げろ」といえば一緒に逃げる可能性が高い。お風呂に入ると気持ちいいと感じる同じ部位が危険情報も感知する▼避難の際に認知症の人が家族と離れ離れになるケースが多い。市区町村の保健師は認知症の人の所在を日ごろから把握しているので、管轄の保健師を探し出すと必要な情報を得ることができる可能性がある。また名前や連絡先を認知症の人の服に縫い付けておくのもよい▼避難先で環境が変わると認知症の人は落ち着かなくなる。家族が目を離したわずかなすきに見えないところへ行ってしまう危険性は常にある。個人での見守りには限界があることを理解し、交代したり集団で見るような体制作りを心がける▼認知症介護研究・研修東京センターがまとめている「避難所でがんばっている認知症の人・家族等への支援ガイド」がよくできていて参考になる。

 ◇「今、新しく使えるアルツハイマー病の薬」 長期間効果が持続/介護者の苦労軽減

 春から初夏にかけて相次いで発売となったアルツハイマー型認知症を適応とする薬剤について、朝田隆教授は「今、新しく使えるアルツハイマー病の薬」と題しパワーポイントを使って解説。先行して使われていた唯一の薬剤ドネペジル(商品名アリセプト)との類似点や違い、併用する場合の注意点などを説明した。

 ガランタミン(商品名レミニール)はドネペジルより長期間効果が持続すること、唯一の張り薬であるリバスチグミン(商品名イクセロン、リバスタッチ)は欧米ではパーキンソン病にも有効であり、飲ませる薬ではないことから介護者の苦労が軽減されること、メマンチン(商品名メマリー)は中等度から重度のアルツハイマー型認知症に適応となり、アリセプトに上乗せすると効果が持続することなどが紹介された。

 そのほか田平教授は「飲むワクチン」の現状を、また東京大学の石浦章一教授が「食べるワクチン」最新の発見とその背景を報告するなど、関心の高まっているワクチンについて様々な角度からの分析が試みられた。

2011年6月