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「認知症相談室」1周年

 薬の質問が過半数 順天堂と提携
 直接聞きたいが……遠慮
 主治医への応対 戸惑いも

 認知症予防財団が学校法人順天堂と提携し実施している医師による「認知症相談室」が開設1周年を迎えたのを機に、担当医師や電話相談員に集まっていただき、この1年の相談内容について分析してみた。それによると過半数は薬に関する問い合わせで、そのほか症状についてや主治医への応対に戸惑う声も目立った。病院等で主治医に直接聞きたいが相談しにくい現状が浮き彫りにされた形だ。

 相談の仕組みは、最初から医師の相談を希望してくるケースと、相談員が「認知症相談室」につないだ方がいいと判断したものを、月2回の相談日に先着順で予約を入れる。相談希望者は指定された相談時間に順天堂大学医学部精神医学教室(新井平伊教授)で待機する医師(大沼徹・先任准教授、黄田常嘉准教授)に電話を入れて相談する。

 財団の「認知症110番」には月に150件ほど相談が寄せられているが、相談員の判断と依頼者の希望が一致して実際に「認知症相談室」に回ってくるのは1年間で31件で、月に換算すると2・5件。数が少ないのは、たとえば承認されたばかりの新薬の種類についての相談はあらかじめ相談員が回答しているため。それでもアリセプト5ミリ服用で安定していたのに、担当医が代わったら倍の10ミリになり、「そんなに飲む必要がありますか」という相談など、やはり薬についての質問が大半という。

 中にはピック病には効果のない薬を不必要に投薬され医療費ばかりかさんでいる事例も見られたという。

 相談室を担当する医師の一人は「かかりつけ医がまだいない場合は電話相談でもいいが、ぜひ主治医に率直に聞いてみたらいかがでしょう」と話す。

 その一方で家族が医師に聞きづらい事情にも理解を示す。「忙しい先生にこんなことを聞いたら失礼じゃないかと遠慮したり、中にはちょっと怖い先生もいるかもしれない。それでも主治医に尋ねるのがやはり一番なんですね」

 別の医師は「半年ぐらい相談室を担当していて私自身変わってきたのは、このご家族に対する精神療法をやっているんだなと思うようになったことです。そういう役割でもいいのかなと」と話し、介護者に対する心理療法的な意味づけを強調する。

 意外に多かったのは特発性正常圧水頭症に関する相談。テレビで特集された後、「アルツハイマー病と言われているが、水頭症の可能性はないか」という相談が続いた。電話だけでは判断が難しいのでMRIや専門医の診察を勧めている。

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 「認知症相談室」は順天堂大学に直接ではなく、後述のフリーダイヤルで予約。患者を直接診察していないので、診断、投薬などの指示はできないが、認知症一般の医学的相談に回答することで、本人と家族の理解を深め、不安の軽減に努める。

 認知症予防財団の「認知症110番」は毎週月・木曜の10〜15時で、電話は0120・654874。

2012年1月