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認知症描く映画 続々公開

誰もがかかりうる病
社会的関心が後押し

 

私の人生

 今年は認知症の人が描かれている映画の〝当たり年〟。そう言えるほど、映画の中で認知症の人が泣き、笑い、戸惑う姿の印象的な作品が次々と公開されている。
本サイトでコラム「母を撮る」を連載中の関口祐加監督の「毎日がアルツハイマー」は監督が初期のアルツハイマー病と診断された母親にカメラを向け、その喜怒哀楽を時系列に編集し、専門医のコメントも加味したドキュメンタリーだ(東京のほか大阪・第七芸術劇場など順次公開)。

 このほか、「ポエトリー アグネスの詩」(イ・チャンドン監督)、「わが母の記」(原田眞人監督)、「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」(フィリダ・ロイド監督)、「別離」(アスガー・ファルハディ監督)など韓国、日本といったアジアの作品から中東、ヨーロッパの作品まで、認知症の人が登場する。

 作品数が増えているだけでなく、「ポエトリー アグネスの詩」や「わが母の記」のように主人公として登場し、人間味あふれる行動で観客の心をつかむ役回りを演じるケースも目立っている。
また「毎日がアルツハイマー」のように認知症の人が持つ能力を正確にとらえ、どちらかと言えば明るく前向きに描いている作品も多い。孫の思いもかけない行動に衝撃を受けつつも、詩作を通じて生きるよりどころを探していく高齢女性を描いた「ポエトリー アグネスの詩」や、認知症になりながら母の愛を息子である作家、井上靖に気付かせた「わが母の記」もそのような作品に該当するだろう。

 2025年には認知症の高齢者が320万人に急増すると言われる日本において、社会的な関心の高まりが、このような作品の制作、公開を後押ししていると言えるかもしれない。
下半期を見ると、8月に公開される『「わたし」の人生(みち)』(和田秀樹監督)や来年の公開を目指し製作準備中の「ペコロスの母に会いに行く」(森崎東監督)はともに介護の在り方を考えさせる作品。

 認知症と言えば徘徊や、会話が成り立たないといったマイナス面ばかりが強調され、隠されることが多かったが、近年は認知症についての研究も進み、誰もがかかりうる頭の病気という理解が進んでいる。これからは娯楽大作を含む多様な作品が加わりそうだ。

2012年8月