長野シンポ パネルディスカッション

◇パネルディスカッション出席者
 関 靖氏(認知症の人と家族の会長野県支部代表)
 江森 けさ子氏(グループホームすみか管理者・ケアマネジャー)
◇アドバイザー
 矢彦沢 裕之氏(長野赤十字病院神経内科部長)
◇コーディネーター
 飯島 裕一氏(信濃毎日新聞社編集委員)

パネルディスカッションにのぞむ(左から)矢彦沢裕之氏、関靖氏、江森けさ子氏

 飯島 認知症とどう付き合うか、どう予防したらいいのか。講演では遺伝的な素因もあるという話がありました。気にされている人もおられるのではと思いますが……。

 矢彦沢 父母がアルツハイマーだと、子供もそうなる確率は数倍高くなります。他方、脳に異常なタンパク質が溜まっても認知症が現れないという報告もあります。父母にアルツハイマーの症状のある人がより生活習慣病予防に努めることは大事ですが、アルツハイマーは遺伝とは関係なく、誰もがかかりうる病気と考える方がいいでしょう。

 飯島 芸術家や政治家は認知症になりにくいと言われますね。

 矢彦沢 知的活動をしている人がなりにくいというデータはあります。しかし、余暇を楽しんだり、運動することは、それと同じぐらい予防に役立ちます。

 飯島 「認知症かな」と周囲が思ったときどうしたらいいでしょうか。本人をどう受診させたらいいでしょうか。

  早期発見は大切ですが、受診させるのは本当に難しい。家族としては、社会的にそういうシステムを作ってほしいと切実に思います。

 江森 家族が「頭痛がするから病院に連れて行って」と芝居して連れ出し、おかしいと感じていことを記したメモを病院の受付で「先生に見せて」と渡す、とか、地域の保健師を上手に使い受診に結び付ける方法もあります。

 飯島 「かかりつけ医」でいいですか。最初から専門医を訪ねるのがいいでしょうか。

 矢彦沢 「かかりつけ医」も認知症について勉強を深めていますから、まずはそこでいいと思いますが、県のホームページで公表されている認知症相談医を訪ねる方法もあります。専門外来は紹介状を必要とするところが多いです。

 飯島 要介護認定の手続きが面倒で、申請をためらってしまうという話もよく聞きます。

 江森 後期高齢者の検診の際に要介護認定までに結びつく制度があったらいいのですが。

  6人に1人しかこれを利用していない制度(厚生労働省調べ)は「公的」とは言えない。制度の存在を知らない人もいます。難しい手続きを作った人はその大変さを考えていなかったのではないでしょうか。

 飯島 家族や周囲は認知症患者にどう接したらいいのでしょう。

  まず「認知症とは何か」をしっかり身につけること。患者の気持ちになりなさいというのは、頭ではわかっているのですが、実際にはなかなかできないもの。そこに深い悩みがあります。

 江森 本人に嫌なことはしない。家族は問題を抱え込まず、オープンにし、無理をしない。困っている人は家族会に入れば救いになります。周囲はぜひ家族を支援してほしい。

 飯島 最新の治療薬の情報を教えてください。

 矢彦沢 ここ数年のうちに新薬が出るとは考えにくい。ワクチン療法が一つの治療として考えられていますが、今のところうまくいっていません。ワクチンを打って確かに異常タンパクは減ったのに、認知症は良くならない、それは、病気になった後では効かなからいではないかと言われています。早期診断の技術が進めば、早い段階でワクチンを打つという時代が来るかもしれません。

2012年10月