認知症予防シンポ 富山会場に380人

 認知症の対応や予防について考える「認知症予防シンポジウム・富山〜認知症と向き合う」=公益財団法人認知症予防財団、毎日新聞社、北日本新聞社主催、アフラック(アメリカンファミリー生命保険会社)協賛=が7月19日、富山市の「ボルファートとやま」で開かれました。県民380人が専門家の基調講演や特別講演、パネルディスカッションに耳を傾けました。

正しく理解、早期発見を
基調講演 浦上克哉・鳥取大教授

基調講演する浦上克哉・鳥取大教授

 日本に認知症の人が462万人いると最近、報道されました。認知症対策は急務です。私は認知症予防を考える前に病気を正しく理解していただくことが大前提と思います。認知症には多くの誤解・偏見があります。一番大きな間違いは認知症は老化現象と思っている方がかなりいる。年のせいだから仕方がないと病院へ行くのを躊躇(ちゅうちょ)する。しかし認知症は病気ですから病院に行って早期発見することが重要です。

 実は物忘れには2種類あります。単なる物忘れの場合は内容の一部を忘れることはあっても、全部を忘れることはない。一例を挙げますと「朝ごはんを食べた」ということをすっかり忘れてしまうのが認知症の物忘れです。正常の人の場合は朝ごはんを食べたことは忘れない。人の名前が出ない、こういうのはあまり心配ないです。一方心配な物忘れ、例えば留守番していて、息子さんへの重要な伝言を頼まれメモしておく。息子が帰って来たら、メモをどこにやったか忘れて息子さんに迷惑をかける。こういうのはちょっと心配な物忘れです。それから今まで使っていた道具が使えなくなると日常生活に支障となる。単なる物忘れと病気による物忘れを理解しておけば早期発見に役立ちます。

 認知症の中で一番多いアルツハイマー型認知症に対しては4種類の薬があります。うち3種類はコリンエステラーゼ阻害剤と呼ばれるもので、これに分類される薬にアリセプト、レミニール、リバスチグミンパッチがあります。一方、NMDA受容体拮抗薬に入る薬としてメマリーがあります。コリンエステラーゼ阻害剤と呼ばれる薬の改善効果ですが、例えばこのおばあちゃんはアルツハイマー型認知症を発症してから趣味の生花をやめたんですが、この薬を飲んでから生花を再開できるようになった。また記憶が改善したという例もあります。例えばこのおばあちゃんは3分たったら忘れて同じことを繰り返し聞いていたのですが、半日記憶がもつようになった。息子さんにとっては半日記憶が持てば、初めて聞いたような顔をして優しく対応することができる。また、これまで日本ではアリセプトしかなかったので、長年飲んでいた方が、病気が少しずつ進行してきたときにメマリーを追加すると、記憶が改善して少し長くいい状態を維持できるようになった。

 認知症の一歩手前の方を認知症予備軍と言います。氷山に例えれば認知症の方は水面上に出た方で、水面下の予備軍は私の予想では2〜3倍の900万人〜1400万人です。こういう方を認知症にしてしまうとどんなに介護力をあげ、介護保険の負担を増やし、消費税を30%にあげても追いつかない。発症予防をしっかり考えていかないといけない。

 これまで認知症予防はできないというのが大方の考え方でした。なぜかというと、その一歩手前に「認知症は治らない」という言葉があるわけです。治らないから予防もできないということです。ではなぜ認知症は治らないと考えられてきたかというと、アルツハイマー型認知症の場合、アミロイドβたんぱくがたまって老人斑というものができる。これがたまると次にリン酸型たんぱくの変化が起き、神経細胞が死んでいく。このアミロイドβたんぱくは一度たまると絶対に溶けないと言われていた。ところが最近のデータからこのアミロイドβたんぱくは溶けるということがわかってきた。アミロイドβたんぱくのワクチン療法とかガンマセグレターゼ、ベータセグレターゼというもののモデレーター、インヒビターといったもの、色んな物質がアミロイドβたんぱくを溶かすと分かってきた。アルツハイマーの根本治療薬としての開発試験が行われているというのが現状です。

 また薬以外でもこのアミロイドβたんぱくが溶けることが分かってきた。アルツハイマー型認知症のモデルマウスを使った実験ですが、良い環境に移すと、一度たまったアミロイドは溶けることが分かってきた。ですから認知症は近い将来、薬以外でもいいケア、いい接し方、いい環境を作ってあげることで予防できる可能性が示されているわけです。

日記、運動、アロマセラピーも効果的

 私は10年少し前に、早期発見が大切と考え、たどり着いたのが物忘れ検診です。残念ながらそのころは物忘れチェックのできるいい器具がなかった。そこで私はこういうタッチパネル式コンピューターを使って、物忘れチェックを簡単にできる器具を作ろうと思ったわけです。全問やっても3分以内にできる簡単な検査ですが、健康な方と認知症の方をくっきり分けることができ、極めて精度が高いことがわかりました。

 私どもは平成16年に鳥取県の琴浦町というところで、65歳以上の介護保険を受けていない、健康に暮らしている方に集まっていただき検診を行いました。この際に物忘れ相談プログラムを大体5台用意します。認知症が疑われる方については専門医療機関に紹介し、認知症予備軍の方は予防教室へご紹介いたします。運動と学習の2本立てにして。3カ月間やりますと認知機能が有意に改善してきまして、3年たってもいい経過が持続している。認知症予備軍というのはなんにも介入せず3年間経過を見るとほとんどの方が認知症に移行すると言われています。このようなデータは認知症予備軍の方が認知症にならないように予防できたデータと言えます。また介護保険の費用削減効果も顕著で、平成16年に2360万円だったものが、20年には7800万円と、多額の費用削減に至っています。

 最後に今日お越しの皆さんがご自分でできる予防対策です。どういう生活が悪いか調べたところ、ほとんどの方がテレビを見ながらうたた寝してました。頭に刺激のない生活が良くない。ではどんなことをやるのがいいか。私は創造的なことがいいと思います。たとえば短歌や俳句を作ること。日記のような普通の文章を書いていただいても結構です。それから運動や笑うこともいい。私がオススメしている方法にアロマセラピーがあります。実はアルツハイマー型認知症というのは物忘れより前に匂いがわからなくなるということが分かってきた。この嗅神経を効果的に刺激してあげれば海馬の神経がやられる前にブロックすることができる。アロマセラピーをやった私たちのデータでは、アルツハイマーの方はアロマをやるとグッと良くなってくる。アルツハイマー以外の方はあまり良くならない。ただ、なんでもいいわけではなくて、ローズマリーとレモンの香りをお昼に、ラベンダーとオレンジの香りを夜使うのが最もいいということが分かってきました。

 私は3年前に日本認知症予防学会を立ち上げました。この中で認知症予防専門士のような制度も作って、認知症予防にしっかり携わっていける人材を育成していくことも目指しております。ちなみに第3回大会は今年9月25日から27日まで新潟市の朱鷺メッセで開催します。ご興味がございましたらHP等で概要を見て頂ければ幸いに存じます。

 うらかみ・かつや 鳥取大学医学部教授。1956年、岡山県生まれ。鳥取大学医学部卒。日本老年精神医学会理事、日本認知症学会評議員。11年に日本認知症予防学会を設立し理事長。認知症の早期発見・予防に取り組み、運転から認知症のサインを見つける等「高齢者ドライバー問題」にも積極的に発言をしている。

2013年8月