パネルディスカッション

同じ言葉反復 傾聴し否定しない
物盗られ妄想 「寂しい」心理状況
認知症の告知 支援態勢を整えて

パネルディスカッション出席者
パネリストの皆さん

パネルディスカッション出席者
白潟 光男氏(こおりやまほっとクリニック院長)
森  勝重氏(県認知症グループホーム協議会長)
小沢 美代子氏(認知症の人と家族の会福島県支部郡山地区会世話人)
◇コーディネーター
鈴木 久氏(福島民報社論説委員長)

 鈴木久さん たくさんの質問をいただいています。それにお答えする形で議論を進めたい。まず、認知症は遺伝するか。老年期うつ病と認知症の違いを。認知症は治るか。これらは認知症の中身についての疑問なので医師の白潟さんから。

 白潟光男さん 認知症とは脳の機能障害。年齢とかけ離れて脳がうまく働いてくれいない状態です。認知症は一つの病名でない。アルツハイマー病もあれば、脳の血管が傷んで起きる場合もある。中には治る認知症もある。遺伝一つとっても、遺伝素因が高いものもあれば、それほど高くないものもある。例えば若年性アルツハイマーは遺伝素因が高い、と今は言われている。血管性認知症は体質が家族で似たりするのでなりやすいことはある。

鈴木さん 今度は認知症を抱えている方からの悩みです。ずっと話し続け、相槌の打ちようがない。夜中3時ごろ起きて、すべての部屋の電気をつけてしまう。

森勝重さん 話し続けているのは何かの思いがあるからです。その間は傾聴し、決して否定語を使わない。本人は否定されると、バカにされたという感情が残る。ただ、いつまでも話し続けているわけではない。途切れた時に、興味を持っている事柄とか趣味のことをすすめる。場面のチェンジです。なぜ、夜中に起きるのか。体内時計の調整が必要で、朝6〜9時の間、5分でいいから日光浴をさせてみたらどうですか。

 小沢美代子さん 同じことを繰り返すのは不安からなのかどうか、顔色、しぐさ、声の調子などから推測してみる。お茶を出したり、外に連れ出したりして環境を変えるのもいい。夜中に起きることが繰り返されると、家族は睡眠不足になり健康を害してしまう。夜中に起きるのは理由があるはず。本人はふと目が覚めたら自分がどこにいるかわからないとか、トイレに行きたいが場所が分からないなど。一緒に部屋に寝て、起きたら話しかけ、トイレの灯りをつけっぱなしにしておく工夫も大切です。

鈴木さん 物を盗られたなどの妄想がある、という質問です。

白潟さん 妄想と規定しまうのは危険です。本人はなくなったことを正当化するため取り繕っているケースがある。その時に一番手っ取り早いのが、誰かに盗られたということになる。自分を保護するために言っているととらえることです。

森さん 一般的に嫁に転嫁するのが多い。身近な人に取り繕いを転嫁する。本人は寂しい、何か役割がほしい、かまってほしい、そういう心理状況だと思う。そこを少しでも補完し、手助けすれば物盗られ妄想もなくなっていく。

 小沢さん 物盗られは認知症の症状の中で半数近くの人にあると言われます。私も同じ経験がある。父を介護しているとき、私がお金を盗った、通帳を持って行ったと言われ、情けなく腹立たしく、もう介護は嫌だという気持ちになった。一緒に捜して、こちらが見つけても本人が見つけたようにする。物盗られは一番親しい人がしわ寄せを受けるので、第3者に管理を頼むのも一つの手かなと思う。

鈴木さん 本人に自覚はないが、家族が認知症だと感じる場合の対応は。本人に認知症だと打ち明けた方がいいのか。

小沢さん 本人は認知症かもしれないと思いながら否定したい気持ちがある。少し不安があるから虚勢を張るケースもある。それを「あんたは認知症」と言ったら、本人はかたくなになってしまう。家族が地域包括支援センターに行って、対応を相談してほしい。打ち明けは、若年性認知症の場合、これからの生き方を一緒に考える必要があるので告知は必要です。年配者でも、自分の状況をしっかり理解しておこうという人もいる。

森さん 認知症は早期診断、早期治療。治療は医療とケアの両面です。それがあると、本人がより落ち着いた生活ができる。打ち明けは一概に言えないが、打ち明けてもサポートする態勢があるかどうかがポイントです。打ち明けるのであれば、なるべく本人がしっかりしている午前中にすべきです。

鈴木さん 友達と話したりできるが、1分もたたないうちに忘れる。極端な物忘れや怒りっぽい。これは認知症の始まりか。自分で異変に気づいたときはどうすればいいか。こういう認知症の自覚に関する質問が来ています。
白潟さん 記憶のことで言えば、認知症の初期兆候は、わかったと聞いているが、そのまま記憶として定着されない。これが出てきたら、疑わなければならない。受診してもらいたいのはこのレベルです。

2014年1月